○ しずおか森と学ぶ家づくりの会の「専門家会員」


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 ◯ しずおかの人は森と共に生きています  山田林業  山田芳朗(静岡市林業研究会森林認証部会 部会長)
 人は人になってからずっと森の恵みを受け、森と共に生きてきました。文明は森のあるところで繁栄してきましたし、森の荒廃と共に衰退しています。もちろん今も人は森の恩恵を受けています。しかしグローバル経済の中で、世界の天然林を利用し日本の森はあまり利用されていません。

 静岡の森は今、皆さんの利用を待っています!静岡の森の多くは手を入れなければ荒廃してしまう森です。地元の森の木を使うことで森に管理の手が入り地域の環境が改善されます。

 私は森に来る子供たちに森の管理のことを説明する時、森の木々の成長を人の成長に例えます。どちらも小さい時は世話がかかります。ある程度大きくなると放っていても成長していきますが、肝心なときには手を入れる必要があります。早熟な木もあれば、着実に成長し長生きする木も、生存競争に弱い木もあります。

 同じように見える木も、木と共に生きる私たち(林業者・製材業者・大工さん)から見ればそれぞれ特徴があり、個性を活かした使い方もあります。木のこと・森のことを体験し理解して、私たちが森と共に生きていることを知ってください。昔の人は、森の中で圧倒的な存在(巨木・巨石・湧水など)に出会うとそれを「山の神」として崇め、森の代表として感謝の意を表してきました。静岡市民の氏神様として親しまれている浅間神社の100段の石段の上に「麓山(はやま)神社」という山の神様を祭っている神社があります。このことから都市部の人たちの森への理解と感謝の意が伺えます。

「今の子供たち、これから生まれてくる子供たちに豊かな森を残さなければならない。」これが私共『緑の循環』認証会議(SGEC)の森林認証を取得した森の林業者の使命だと思っています。それにはまず私共が持続可能な森づくりを行なって、地元の森をうまく利用する流れを作る必要があると思い「森とま」に参加しました。そして、皆さんの興味や理解も必要です。

 森は、森のルールを守って理解しようと訪れる方には豊で優しいところです。 是非「森とま」のイベントで私共の森にいらしてください。お待ちしています。

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 ◯ 森の木から見えるもの感じるもの   鈴木林業  鈴木英元
 やまのこと、木のことについて今、自分が感心を抱いている事を書きたいと思います。
森林の中を歩いているとたくさんのことを感じます。自分の持っている五感が研ぎ澄まされます。先ず、鳥などの声が耳に聞こえてきます。

 花の香りや、土の匂いなどは鼻で感じます。今だと、山にあるイチゴを食べて口で味を感じます。手で木をさわったり、沢の水の冷たさを肌で感じ取ることが出来ます。そうです、森林は(山の中)ではいろいろなことに興味をもつ事が出来るのです。

 どこの山へ行ってもそうなのですが、この山はどんな所だろうかと思いながら森林に入ると、自分の中では処理できないくらいのものが飛び込んできて、この木は大きな。これはなんて名前の木だろうか、何年くらい生きているだろうか、今の時期ならヒルはいないかな、ヘビはいないかな、自分の身に起こる危険を見つけるなど一つ一つ整理するのに少し時間がかかります。ずっと歩いて頂上に着くと景色のいいところに出て、その景色を堪能できる。目に入ってくる情報って本当にたくさんありますよね。木、一本一本も同じです。この木はこれからも大きくなるだろうか、何か邪魔をしている物はないかな、硬い木かな柔らかい木かな、枯れてしまうだろうか、まだまだ書ききれないほどあります。

 皆さんが思っている立派な木ってどんな木でしょうか?

 我々林業家は、一本でも多く立派な木を育てたいと思っています。そのためには、木の樹冠といわれる所がとても大切だと私は思っています。ここは枝や葉のところを指していて、葉の気孔から吸収した二酸化炭素と、光エネルギーを使い、根から運ばれてきた水とで光合成が行われて私たちにおいしい酸素を提供してくれています。水は形成層の内側にある木部(辺材)という部分を通ってきます。

 そして、林業では「枝打ち」という作業があります。これは将来(50年位かな)どのような木にしようか、どのような山にしようかで作業の仕方は異なりますが、樹冠から離れた下方の幹ほど太らないように抑制し、円すい形の幹を円柱形に変える仕事です。この仕事を実施することで高価な柱材などを作ることができるのです。

 最後に、私は根元から見たとき、根が広く張り巡らしていて、枯れ枝が少なくて、年齢のわりに適度に肥大成長をし、光合成を盛んにしている木を想像します。これらを山の中で思うとたのしくて、目に見えるものと、見えないものがひとつになる喜びがあります。

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 ◯ 樹を木材として活かすこと   杉山製材所 杉山徹
 どんなに素材が良くても、料理人がしっかりしていないと、美味しい料理になりません。
林業の専門家会員から届けられた良い素材を、どう料理していくか? 製材所の腕や考え方が問われる時です。

 製材の仕事は、森から始まっています。林業の方達と共に木材の供給を考えて行くことが必要なのですが、今まではそれが出来ませんでした。こうして森とまの専門家会員同士のネットワークが出来上がり、森から良い素材を搬出するための、話し合いや研究が、これからは大事な作業になります。

 しかし、難しい事をしようとしているのはなく、林業・製材業ともに「昔にもどれ」を実践すればいいのだと思います。

 林業なら、木の伐り旬を守る。葉枯らしをする。出材の時期を見極める。
 製材なら、適所適材を考えて製材する。天然乾燥(自然乾燥)をする。など。

 昔は当たり前に行われていた事。昔のやり方の方が、よい木材になるのです。

 一方で、家づくりのスタンスも家族構成も変わって来ているという事実があります。「住まう」事の考え方は新しい風が必要です。森とまの専門家会員である建築士さんとの協力関係が、これから大きな力になるはずです。

 新旧の良い所を上手に活かした家づくり。森とまの仲間がいるから出来る家づくり。

 森とまは無限の広がりを感じるネットワークです。

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 ◯ 家づくりの楽しみ   清水建築設計室  清水利至
 敷地の中でどこに家を置いたら一番いいのでしょうか。機能的な部分も大切ですが、太陽の光、影、風、道、毎日の暮らしをイメージして日常の中で楽しい瞬間を感じられることが大切です。間取りをつくっていく。部屋の数を考えるのではなく、仕切り方を考えます。

 高さも自由です、高いところ低いところの変化が空間に豊かさをつくりだします。それをかたちづくる構造についてはコストと空間の特徴を考えてどんな形式が適しているのか考えます。変形してたり、高低差がある敷地も工夫すれば大丈夫、解決策はみつかります。

 材料もいろいろあります。たとえば、伐採の見学をした森の木をこの家に使いましょう。大切に育てられ、何十年と生きてきた木と共に暮らす豊かさが感じられます。床や壁の材料は直接体に触れたり、毎日目にする部分だからよく解っていたいし、ずっと気に入っていられるものを使いたいですね。自然の材料はメンテナンスも必要ですがそれも楽しみのひとつになります。

 最近の設備機器は便利な機能が満載です。でも、ホントにそれが必要なのかと考えてみます。ほかに家族の楽しみの為に使いたい部分があるかもしれません。建物の外観は大切です最初から決めてかからないで、プランや構造をいろいろ考えてくると、自ずと形ができあがってくるものだったりします。無理のない、そこで暮らすその人らしい建物になってきます。

 何年暮らしても、自分の家だなあと感じられる、廻りからもいい感じと思われる、それが住む人の幸せにもなります。そう見えるようにいろいろ細かい部分に気を使い、手入れがしやすく機能的できれいにまとめる必要がありますが、それは建築士の仕事です。

 ここに書かれたようなあんなこと、こんなこと考えるのが楽しいと思えるなら、楽しまないともったいないです。それならば、少し時間は必要ですが、家づくりを学んでみましょう。そこから楽しみが始まります。

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 ◯ 森とまの家づくり   杉山智之建築事務所  杉山智之
  家づくりとは問題を掘り起こし、そして整理解決することです。それぞれの家庭の事情は敷地や予算も含めてまさに千差万別ですが、これらから避けずに正面から取り組むことはとても大切な作業です。我々住宅を手掛ける設計事務所はここに力点を置いています。

 私が実際のデザインの上でいちばん気を遣っているのは、素材や形状をいかに美しく見せるかということです。木材や鉄、左官材料など、素材の持つ特性、美しさを最大限に引き出す。また柱は線として、壁は面としてすっきりと美しく見せる。極めてあたり前のことが中途半端な既製品を多用することで近ごろは見えなくなっていると感じています。森とまの木には素材としての美しさと機能、ストーリーがあり、積極的に活用していきたい建材です。

 日本の住宅は30年、40年というスパンで建替えられていくことが多いというのが現状です。これは森のサイクルからみても、その他の資源や廃棄物を考えても大変な問題です。愛着の持てる住まいを大切に使い続けることが、なによりのエコロジーではないでしょうか。
 森とまの活動を通して、一本の柱梁がどれ程の手間そして思いを込めて作られてきたのかを知ることができます。大切に育てられた木材をいちばん幸せな形で使うことができるよう、共に考えていきましょう。

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